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2017.05.21

第39回日本消化器内視鏡学会総会に参加してきました。その1

第39回 日本消化器内視鏡学会総会に参加してきました。

こんにちは。5月といえば、内視鏡学会の時期です。今年も参加してまいりました。

内視鏡分野は、急速に成長をしており1年間でまた随分と研究が進んだという印象を受けました。とりわけ、この消化器内視鏡学会は最先端の医療や技術を吸収できる場であります。

専門クリニックとして、患者様にとって何が大切か?

様々答えはありますが、「新しい、先端の医療を提供する事」これは上位に位置すると考えております。内視鏡専門クリニックである以上、常に医療をアップデートしてゆきたい。そのように考えております。

さて、今回の総会で話題となったお話しをご紹介させていただきたいと思います。

「胃がん検査はX線ではダメな時代。内視鏡での胃がん検診が重要であり、内視鏡医の検診レベルの向上が今後の課題。」

胃がん検診を受ける際、現在はまだまだ胃バリウム検査を行う施設が多いと思われます。数年前から、胃バリウム検査と内視鏡検査の検診の有用性については検討を重ねてきました。今回の学会で、内視鏡検査が胃バリウ検査に比べ、胃がん発見率が有意な差をもって高いということがはっきりとデータで示されておりました。つまり、胃バリウム検査では内視鏡検査に比べ、どうしても見落としが発生してしまうということです。また近年では胃バリウム検査の結果を読影できない医師が増えていることも問題となっているようです。

我々、医師が強く皆様に訴えなくてはならないのは、胃バリウム検査では不十分であること、胃がんの検診には内視鏡検査を受けるべきであることだと今回改めて感じました。

藤沢市でも、まだまだ精度管理の観点から、内視鏡による胃がん検診の実施は難しい様です。そのため、個人の心掛けが重要となってきます。

また、小さな分かりにくい胃病変を内視鏡で発見できる様、医師に要求されるガイドラインも整いつつあります。当院の機械はNBIという画期的なシステムを搭載しています。NBI(Narrow Band Imaging:狭帯域光観察)とは、2つの短い波長の光(波長:415nm, 540nm)を粘膜にあてることで粘膜の微細な表面構造や毛細血管をくっきりと写し出すという技術です。がんでは周囲の粘膜とは表面の構造、毛細血管が違っているのでNBIを使うことにより「がん」が浮かび上がって見えてきます。つまりNBIシステムによりこれまで通常の観察で見逃されていたような小さな咽頭、喉頭がん・食道がん・胃がん・大腸がんも見つけることが可能となりました。

さらに今回の学会においてLCI(Linked Color Imaging)という機能を搭載した内視鏡の機械が話題になっておりました。LCIとは、2種類のレーザー光による病変観察が可能な内視鏡システムの画像処理機能です。「LCI」は、「白色光用レーザー」で画面の明るさを保ちながら、重ねて照射される「狭帯域光観察用レーザー」で粘膜内の血液のコントラストを高めた画像に対し、赤色領域の色分離が良くなる画像処理を行うものです。消化管の正常な粘膜、萎縮粘膜、発赤などを診断するうえで重要になる粘膜の色は、赤色領域に集中しています。「LCI」は、これらの粘膜色に近い色の彩度差・色相差を拡張する画像処理を行うことで、粘膜のわずかな色の違いを強調して、炎症の診断をサポートします。より分かりにくい病変(特に表在癌)をはっきりと映し出す、NBI同等の優れたシステムです。内視鏡による胃がん検診において内視鏡医の技術向上にも大きな役割を果たすと考えます。今後当院においても、導入することを検討したいと考えております。また、当院でも導入している細径経鼻内視鏡ですが、従来の胃カメラに比べかなり細いにも関わらず、技術の向上により画質が極めてよいとされています。また従来の胃カメラに比べ動きが軽やかでしなやかでもありますので、胃内の観察が隅々までできるという特徴があります。その様な万能な経鼻内視鏡でも検査医の検査の仕方で大きく違ってきます。

今回の学会でも、胃角部後壁、噴門部、体部大弯は最も見落としが発生しやすい部位というデータが大規模研究の結果出ておりました。これは内視鏡医であれば、周知の事とは思いますが、私も今以上にその点に注意ししっかりと観察、診断をさせていただきます。

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